水曜日の彼女
机に置かれた眼鏡を掛け、ネクタイを締めると、もういつも見かける森山くんに戻っていた。
「じゃあね。玲菜。
また来週の水曜日。
くれぐれも契約違反はしないように。」
「分かってる。」
私が返事をすると、後ろを振り返ることなく森山くんは図書室を出て行った。
契約違反……。
会うのは水曜日の放課後だけで、学校があるときのみ。
下の名前は絶対に呼ばない。
森山くんに恋愛感情は求めない。
分かってる…分かってるけど…やっぱり辛いな…。
森山くんが出て行ったドアをジッと見つめながら、彼の温もりが残る唇にソッと触れた。
私にキスした彼の唇は…
明日は違う人の唇と重なる……。