水曜日の彼女
**名前が分からない感情**
~~朝陽side~~
朝…携帯のアラームが鳴る前に目が覚める。
ベッドから起き上がると、顔を洗いに洗面所に向かった。
「朝陽おはよう。」
「おはよう母さん。」
柔らかく笑う母さんに挨拶をして、席につき朝食をとる。
俺が5歳、弟の博斗(ひろと)が3歳の時に父さんと再婚した母、瞳さんは俺が6歳の時に一番下の弟の奏汰(かなた)を産んだ。
再婚した当初は、奏汰を既に妊娠していた…という事もあり…、父さんから裏切られた様な気持ちになったが、奏汰が産まれてからも、3人変わらずに接してくれる瞳さんに、すぐに心を開いた。
俺も博斗も、自然と【母さん】と呼べるようになるまで、時間はそう掛からなかった。
初めて【母さん】と呼んだ時には、俺の頭をグシャグシャと撫でながら、目に涙を浮かべていた。
もう…俺は…父さんの離婚の原因が何だったのか…考えるのは止めることにしたんだ。