水曜日の彼女


「だってあの時の兄ちゃんの顔。

俺のベスト3に入る笑顔だったんだ。

だから楽しいことがあるのかなぁって……だからだよ。」



「・・・・・・・。」



「今思えば、亜紀さんに会えるってことより、兄ちゃんの笑顔見たさで付いて行ってたと思う…。」



「・・・・・・・。」



「でも…何回か会っているうちに、母さんの見送る顔が【作り笑い】の顔に変わっていったんだ。
そんな母さんの顔…見たくなかった。

せめて俺だけでも傍に居れば、そんな顔しないかなぁって思って…亜紀さんを断ったんだよ。」


「・・・・・・・。」


「兄ちゃん…前に『【心にポッカリあいた穴】を埋めたい。それが出来るのは亜紀さんだと思う。』って言ってたよね?

その話聞いて、兄弟の俺にもあるんじゃないかって思ったよ…【心の穴】。

でもやっぱり小さかったから、記憶がないんだよ。


忘れた訳でも、切り捨てた訳でもなく…沢山の思い出は、

父さんと母さん、兄ちゃんや奏汰でいっぱいで……

だから俺の場合は、あったとしても気づかないまま埋め尽くされて、気づいた時には跡形もなかったんだよ。」



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