水曜日の彼女
亜紀の背中に回した腕を緩めると、亜紀の顔を覗き込んだ。
「亜紀さん。
俺…小さい頃の記憶があんまりないんだ。
頭のどこかで拒否し続けてきたんだと思う。
だからさ……
これから時間の許す限り…昔のこと…教えてくれない?」
俺の言葉に、亜紀が驚いたように俺の顔を見つめると、
「それって…また会ってくれるって言うこと…?」
自信なさそうに呟く。
「俺に悪いなって思ってるなら、それくらいの事してよ。
それに…俺にも少しくらいの親孝行させて欲しい…。」
そう言ってニッコリ微笑むと、亜紀が更に涙を流しながら
「……ありがとう。」
そう言って何度も何度も頭を下げる。
その光景を、母さんと博斗が、俺の大好きな笑顔で見つめていた。