水曜日の彼女
その会場の一番後ろのドアの前に立ち、一番前に居る朝陽の姿を眺めていた。
「亜紀さん…俺…一緒に過ごした3ヶ月間…ちゃんと親孝行出来てたかな…?」
朝陽は…小さい声で返事をしない亜紀さんに話しかけた。
「俺は……最期の時を一緒に過ごせて…本当に良かったと思ってる。
自分の意地を貫いて、あなたに会わなかったら……俺はまた…後悔するところだった。
俺を亜紀さんに会わせようとしてくれた家族や、遼……そして…玲菜にありがとうって頭を下げないといけないね。」
いきなり自分の名前が出てきた事に驚く。
「家族や遼には話すことが出来たけど…まだ…玲菜とは向き合えてない…。
きちんと向き合わないと…。
きっと……俺のせいで…玲菜の心も傷ついてるから…。
ちゃんと亜紀さんとした約束は守るから。
だから……【お母さん】……
安心して…安らかに眠って……。
そしていつも俺たちの事…見守っていて……。」
朝陽が亜紀さんのことを
【お母さん】
と呼んだ。
その事が嬉しくて…切なくて…私の頬を涙が伝った。
そして…そっとその会場を後にした。