浅葱色に射す一筋の泪
ポロポロポロポロ
優愛「軍人の父上と母上を戦で失いたくない………。武士の妻だと自覚しても……、武士の家族だと分かっていても……皆を失うのが……怖いよ………」
優輝菜は手を止め、振り返り、優愛を抱き締めた。
優輝菜「じゃあ……。 一つだけ……」
優愛「……………………………。ん…」
優輝菜「父上が死んだら……母上はおかしくなる……。私も武士の妻でも覚悟なんてしてないよ」ナデナデ
優愛「え?」
優輝菜「父上が安心できるように言ってるだけで、覚悟なんてしてないよ?
父上は副長だからね……何百人の部下と部下の家族の生活がかかってるからね?私が毅然としてないと……父上が仕事に集中出来ないでしょ? 陸も空軍の頭だから……不安にさせちゃいけないの。
嘘でも……武士の妻だから覚悟してますって言わなきゃいけないの……。
それが【長】と名がつく夫を持つ妻の役目なんだよ?」
優愛「……………………………。
母上も覚悟なんて……無いの?」
優輝菜「不安で仕方ないよ………。
優愛……私と同じだよ………」ポンポン
優愛「……………………………。
母上と同じ気持ちで良かった………」
優輝菜「……………………………。
優衣のが可哀想だよ………」
優愛「え?」
優輝菜「……………………………。
歳や、陸は指揮官だから、戦に出ても最後尾でしょ? 総司は最前線。
左之や平助、新八、一、武田 観柳斎達も最前線……。 優衣やおまさちゃん達のが、ずっと不安だよ?」
優愛「優衣ちゃん………」
優輝菜「………。だからね……?武士の妻は毅然とした態度じゃなきゃダメなんだよ? 嘘でもね………」
優愛「みんな……不安なんだ………」
優輝菜「みんな不安だよ?」
優愛「……………………………。うん」
優輝菜「さぁ!残りの仕事片付けるよ!少し寝て良いよ?」
優愛「母上といたいから良い。次、いつ会えるか分からないし……」
優輝菜「ふふ……可愛い奴………」
まだ優愛も二十代前半……。不安で仕方ない筈………。
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さて……。帰りますか………。
土方「世話んなったな………」
優輝菜「ありがとう。楽しかった……」
陸「また来てくださいね………」