みんな病んでる。
私も、ユウカが髪の毛を抜くように、かさぶたを剥いでは集めているのだ。

私は、トイレの個室に入った。

そして、鞄からプラスチック製の丸い500円玉大のピルケースを取り出した。

うふふ。

思わず笑みが零れる。

きゅっとその蓋を開ける。

そこには、今まで剥いてきた、身体のあちこちのかさぶたが入っている。

大きいものは、直径5センチくらいのものから、小さいのは耳滓くらいのものまで。

色は、何とも形容しがたい。

茶色いものや、黄土色のもの。ちょっと血が混じっているものもある。

なんでこんなに綺麗なんだろう。

私はキャップを閉めて、ピルケースを耳許で揺さぶる。

サカサカ。

サカサカ。

心地よい音だ。

私にとっては、貝殻に耳を充てて、潮騒の音を聞くのと同じくらい、気持ちの良い音なのだ。


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