みんな病んでる。
「デートかぁ。モカにはまだ早いんじゃないのか?」

ふん。

若くてちょっとイケメンだからって、それだけで女が寄ってくる。

横溝だって、結局、就職口がないからだとか、給料が安定しているだからとかの理由で教師なんてものになったのだろう。

モカと呼ばれた女子は、天然なのか、ふわふわあたまで、背が低くて、可愛らしい感じの奴だった。

ちょっと目を引かれてしまったのは、我ながら情けない。

芯のありそうなサツキとは、また違うタイプだ。

そう、俺の好きだったサツキとは……。

「あんた、ネームプレート落としたわよ」

不意に声がした。

今しがた、ちらっと思っていたサツキだった。

俺の学ランの左胸から落ちたらしい、名札を差し出している。

「汚ったね~。触るな! エイズの分際で!」

サツキからそれを奪い取ると、片手でつまんでひらひらと振って見せた。

「……」

サツキは挑むような目で俺を見る。
< 27 / 37 >

この作品をシェア

pagetop