みんな病んでる。
事件は突然に起こった。

次は、音楽室への移動教室だった。

教科書、ノート、リコーダー、筆記用具。

それから、スヌーピーの「宝石箱」を胸に抱え、私はひとり廊下を歩いていた。

どんっ。

急に誰かがぶつかってきた。

「アホ毛~。何、その頭。静電気でも放ってるの?」

クラスメイトの男子がそう言って駆けて行った。

その瞬間、カン! という音がして、アルミ製の「宝石箱」が床に落ちてしまった。

ケースの蓋が開いて、コレクションの髪の毛が廊下に散らばった。

まずい! 私は瞬時に思った。

こんなもの、ひとに見られたら、今度は何を言われるのか解ったもんじゃない。

それに、この「宝石」は私だけのものだ。

誰にも見られたくなかった。

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