月下美人ー親友以上恋人未満は、運命じゃない二人ー【完】
1 満月じゃない夜
(消えたい……)
夕暮れの山の中は、思っていたより昏(くら)い。
涼音は山歩きには慣れている。
けれど、太陽や木々の場所の関係で、涼音の知る山より陽が落ちるのが早いのだ。
ここは涼音の家の裏山と同じように下草が刈ってあるので、
たけのこ山やしいたけ山として管理されているのだろうか。
平地になっているし、歩きやすいことは、歩きやすい。
(……歩きにくい方が見つかりにくい、かな)