月下美人ー親友以上恋人未満は、運命じゃない二人ー【完】


涼音はスクール鞄を肩にかけ、ブレザーの制服にスニーカーの、下校途中の中学生の格好のまま山に入っていた。



たけのこが掘りたいわけでも、しいたけが取りたいわけでもない。
 



たけのこは、中秋の名月が近づく今は季節じゃないこともわかっている。
 



三月になったら、健脚な祖父母と一緒に裏山でたけのこ掘りや蕨取りが毎年の恒例行事だが、


来年のその季節に、自分はいるのかなーと考えてみる。



(……いたくないな)

 

答えは簡単に出る。
 




どこでもないところへ行きたい。




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