月下美人ー親友以上恋人未満は、運命じゃない二人ー【完】
「右手のは父さんとのペアリングで、左のは、父さんの遺品の中にあったものなんだ。
母さんが私のことを話すはずだった日、父さんは母さんに婚約指輪を用意してた」
「……それって」
「プロポーズするつもりだったんだろうね。音哉父さん」
プロポーズする、その日に……。
「……そんな、タイミングで……」
「うん。そんなタイミングだった。……知らせを聞いた母さんは気ぃ失って、私も一緒に生死の境を彷徨ったそうだ」
涼音の声音は淡々としている。
「……それでも、涼音は生まれたんだ」