愛してるの一言で。


「うあぁっ!!!」



「きゃ!?」




飛び起きた俺にビックリした声がした。

「はぁっ....はぁっ....ぁ」


額を触ると汗をたくさんかいていた。


「だ、大丈夫?」


俺は頭を抱える。


声の主が誰かなんて
どうでもよかった。


ただあの夢は....
あの声は....



「奈々....?」



ふとつぶやく。
さっきの夢は紛れもなく

『あの時』のもの。


「え....なんで私の名前を?」


キョトリとした言葉を耳にし
顔を上げる。
そこに立っていたのは
黄色のオシボリを持った

もう一人のナナだった。

「わ!すごい汗!
はい、オシボリ!額に当てて!」

「....ああ。ありがとう。」

「うん...」

ここはどうやら保健室のようだ。
俺は白いベッドにもう一度横になった。

「あの...」

ナナがオドオドと話しかける。

「...ん」

「陸くんって....彼女がいるの?」

「....なんで」

「....ずっと呼んでたから...
さっき、『ナナ』『ナナ』って。」


ああ....、俺はやっぱりさっきの夢にうなされてたのか。
まさか寝言まで聞かれるとはね。

「昔、ね。
今はいない。」

「そ、そうなんだ」

あからさまにホッとするナナ。

< 37 / 74 >

この作品をシェア

pagetop