愛してるの一言で。
そして帰り道。
俺たちはコーヒーを飲みながら
ダラダラと同じ通学路を歩いていた。
そう結局
『奢れ奢れ』としつこい伸也に根負けして
コーヒーを奢ってあげたのだ。
「あーあ」
珍しく深いため息をつく伸也に俺は
「どうした?」と声をかける。
「フラレちまってさ〜
未練タラッタラの自分に嫌気が差し中〜」
そう言って伸也は首をひねりながら笑った。夕日に照らされ伸也の耳のシルバーのリング型ピアスがキラリと光る。
「諦めなければいい」
俺は伸也の少し前へと足を踏み出す。
「諦めるしかねーの、それが」
「?」俺は首をかしげた。
「好きな奴がいるんだとさ。
それも涙目で切なそーに言うから
無理じゃん。
俺思わず応援する、とか言っちまって....
はっはっはー........はぁ。マジありえねェ」
「その好きな奴って誰か聞かなかったのか?」
そう俺が聞くと伸也は背伸びをして
一息し、こう言った。
「教えられないんだって」
悲しげな表情の伸也を見るのは久し振りで
ほんとにその子が大好きだったんだ、と
改めてその一途さに少し感動してしまった。
「新しい恋見つけれるといいな」
俺はコーヒーの最後の一滴を飲み終わりそう言った。
それを聞くと伸也はヘラっと笑う。その笑顔は見てるこちらが気の緩みそうになる、そんな感じ。
「ほーんとそれなぁ。
早く新しい恋見つけねーとな!」