愛してるの一言で。



「…お前のその元気の無さは、さ。
やっぱ引きずってんの?」


ゆっくりと言葉を一つ一つ
絞り出すように言う伸也が
俺の目をおずおずと見つめた。


「…」


狭い4畳半の部屋に沈黙が流れる。


俺はあえて何も言わなかった。
いや....言えなかった?


分からないけど
言えなかったとしたら
それはプライドかもしれない。


昔の女を1年経った今でも
一途に想い続けてる重い男だと
思われるのが
きっと嫌だったんだと思う。



プライドなんて
最初から無いようなものだけど。



「....言いたくねぇなら別に
言わなくてもいいんだけどよ」


そう伸也は笑顔を繰り出した。


「....そういうわけじゃない」



『じゃあ、どういうわけ?』そうこの時伸也に聞かれてたら俺はどう答えていただろう。

それさえも分からない。
俺の頭はうまく働くことができないのだろうか?

そういう風に自分を考えると
少し笑いがこみ上げる。



「....引きずってる風に見える?」


見えるに決まってるじゃないか
そう分かってるけど
話すことがなくて続ける言葉が無くて
そう聞いてみた。


伸也は目を丸くして
チューハイを一飲みした。


「見えるよ....って言ったらどーする?」


伸也はそうニコリと微笑んだ。

その笑みに俺は嫌悪感を覚える。


(馬鹿にしてんのかよ...)
心の中が黒くどよめく。


すると伸也は 急に真面目な顔になった。
真面目な顔....というより

ガン付けみたいな迫力満点の怖い顔。

きっとこれを子供が見たら
一瞬で泣き出してしまうだろう。
ヤクザでも怯んでしまいそう。
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