愛してるの一言で。
「前田奈々のこと」
ドゴッ!!!
勢いよく黒とシルバーの
ブロック柄のテーブルを蹴った。
蹴ったのは、伸也
という訳がなく
俺だった。
奈々を忘れる?
奈々を殺したのは俺なのに?
奈々を愛してる俺が?
忘れろと強制されたわけじゃないのに
どうしてもそういうふうに取ってしまって
俺は咄嗟に頭の中に駆けいった怒りを
抑えられなかった。
伸也は一瞬ビクリと肩を震わせたが
ただ大きな音にビックリしただけであろう
「んだよ」と低く重い声で俺を睨む。
それに俺は我にかえり静かに口を開く。
「関係ねぇだろ....奈々は。」
すると伸也は口を歪ませ笑った。
鋭い八重歯が見え隠れする。
「おっまえ馬鹿じゃねぇ?
前田が関係ねぇ訳ねーだろ? 」
そんな伸也が悪魔に見えた。
何でそんなこと言うんだ?
俺にそれを言って何になる?
答えの見つけようがない質問が俺の頭を駆け巡る。
頭が痛い。