愛してるの一言で。
「ぉ、おはよっ」
不意に後ろからか細い声がしたと思い
振り向きドキリとした。
そこにいたのは渚奈だった。
「....おう」
伸也は1組
俺は3組な為
先ほど別れ俺は1人便所から
自分の教室へ帰るところだった。
そんなところを渚奈に引き止められたと
いうかたちだ。
気付けば廊下にいるのは
俺達二人だけ。
シンとした朝の独特な空気に
包まれ俺達は2人佇んでいた。
「陸くんって3組なんだね」
「....おう」
「....」
「....」
俺が全て『おう』で済ませてしまうため
会話が続かない。
いや、続かせるつもりなんて
ハナからないんだけども。
渚奈は下を向き
頭をかく。
頬と耳が赤く染まり
茶色の髪が朝の日差しに反射して
キラキラ輝いてる。
それはまるで天国から
下界に降りてきた天使のようで。
奈々と錯覚してしまうほど
美しく
華麗...。
死んだ奈々が天使となり
俺の前に現れてるように感じられた。
「渚奈....さんってさ」
俺の声に反応し
瞳を鮮やかに輝かせ俺を見る。
「えっと!渚奈でいいから!」
「え、あ....うん。
渚奈ってさ....兄弟とかいたりする?姉妹とかでも。」
苗字が違うというのに
こんな話を持ちかける俺はアホだとしか言い様がないかもしれない。
だが聞かずにはいられなかった。
「どうして?」
渚奈はキョトンと首を傾げる。
「いや、ちょっとね。」
「...そう。」
「言いたくないならいいんだ」
「ごめんね...。」
『そう』と言った渚奈の顔が
少し寂しそうに見えたのは
俺の思い違いだと思いたい。
そうして朝のHRのチャイムがなり
俺達はそれぞれの教室へと別れた。