愛してるの一言で。
「知ってると思うけど、
あたし、渚奈の友達なんです。」
「うん、知ってるけど。」
そんなの見りゃわかるしな。
あー、だるい。
せっかく、気晴らしってゆーか
まぁ、そういうのを望んでゲーセン
来て...。
なのに...
はぁ、女は嫌いだ。
ほんとにだるい。
「渚奈の秘密知りたくないですか...?」
「...は?」
女はニコリと笑って
俺の胸らへんを妙にいやらしく触れる。
「知ってるんですよ...?
陸くんの元カノ...。渚奈と同じ菜々っていうらしいですね...?」
ふふ、と怪しく笑う。
「菜々のこと...なんで知ってんだよ...。」
菜々のことを知ってるやつは
伸也しかいない。
高校の奴らに
俺の通ってた中学の奴はいねえ。
伸也以外は。
でも伸也は言わねえだろうし...。
「さあ...?なんででしょうね...?
しかも...顔もそっくりで...ふふ。
だからですかぁ?渚奈と話すとき
顔、赤いですもんね、ふふっ」
「黙れよ、てめえ。」
馬鹿にした態度に俺はいらつき
女の手をはらった。
「あ、怒っちゃいました?
....ていうか、タメ語でいいよね?
だいたい、タメで敬語なんてありえないもの。
で?どーするの?渚奈の秘密聞きたくないの?」
「お前...何もんだよ....」
「...名前聞いてるの?それって。
江戸時代とかそういう時代じゃないんだから何モンも何も無いし。」
こいつ...。
どんだけイラつかせんだ。
こいつと話してると
頭が爆発しそうだ。
「私の名前は絵麗奈、花咲 絵麗奈(ハナサキ エレナ)よ。
なんでも好きに呼んで。」
「じゃあ、花咲。」
下の名前で呼ぶ関係でも無いしな。
「は?」
花咲は眉をひそめ
口をひんまげた。
「なんだよ」
「陸くん、あんたって...
モテないでしょ」
「はぁ?」
何を言い出すんだ、コイツは...。
いきなり...。
つーか、モテないでしょって。
そんな全くじゃねえぞ?
朝のキャーキャーつう、黄色い声は
俺に向けてってこと、こいつも知ってるだろうに。
別にモテたくないけど
モテないでしょ、とか言われると
何かムカついた。
「別に...、しらねーよ。」
ぶっきらぼうに答える。
「あ、アンタは顔がいいから
面食いにはモテるだろうけど。
でも内面は女を喜ばせれないよ、アンタ。
すぐフラれるタイプ。告られるけど~みたいな?」
ギクリ。
確かに、菜々の前に付き合ってた
歴代の女達は全部向こうからコクってきたけど
最後は俺がフラれるってケースが多かった...。
こいつ、マジで何者...。
「その顔は当たりって感じね〜。
ま、そーだろーねー。
だって、好きに呼んでいーよっつてんのに
わざわざ苗字で呼ぶかなぁ?
ほんと親近感っていうか、近付くチャンスじゃん?下の名前で呼ぶと親密度upでしょ?わかんない?」
「...別にお前と親密度upなんか
したくねえもん...」
あまりの花咲の怒涛の迫力に
俺の声は少し頼りなくなく聞こえる。
「はい?なんて?」
花咲は目を見開き
聞き返してきたけど
「なんでもねー。」と俺は言った。
「まぁいいや。花咲でも。
さ、今から喫茶店でも
行って話そ。暇だし。ね?
秘密も知りたいでしょ?」
「...別に。」
「知りたい、よね?」
ニコニコ笑っていやがるくせに
なんでこう、なんか恐ろしいオーラが...
逆らえない感じがにじみ出てる。
女はこうだから怖いんだ...。
菜々とは大違いな花咲を見ると
菜々が恋しくなった。
そうして俺は
花咲に手を取られ
ゲーセンを後にした。