今日は良い日だ
「この町を作った人間はな、旅人だったそうだ。様々な国や町を渡り歩く旅人。自分の目で見て、自分の耳で聞いて、それを自分の中に息衝かせることのできた人間」
ソーセージをつまんだ手をエプロンで拭いてから、親父はキリクを向き直した。
「俺が思うに、だがな。そいつは角族を自分の町で受け入れることに何の違和感もなかっただろうと思う」
親父は真剣な眼差しをしていた。
「旅の中で会った角族は多分、そいつの目には人間と同じように映ってたんだろうな。あいつらをちゃんと見ようとすればそんなの誰にだって分かる。あいつらに害は無い。……本当は、簡単なことなんだがな」
親父は最後、切なそうな顔をしてそう言うとガタッと席を立って後片付けの続きを始めた。キリクは暫く正面を見つめて考えた後、冷え切ってしまった夕飯をやっと食べ始めた。