今日は良い日だ


「なあ、」

「はい」

「言いにくかったら、答えなくてもいいんだが」

「……はい」

片付けの手を止めてイーコがキリクを振り返る。


「左足の、その鎖は、……外せないのか?」

イーコが動くたびに聞こえる耳障りな金属音。キリクにはその枷がそのまま過去の傷を現しているように見えた。同情などという偽善的な感情は嫌いだが、見る度に心の隅がチクリと痛むような気がしていた。


「ああ、」

左足を一瞥してからイーコは話し始める。


「外れないんです。今まで何人かの方が外そうと試みてくれたのですが、どうやっても。やはり鍵がないとだめみたいで」

「ふうん……」

キリクが余程厳しい顔をしていたのか、イーコがくすりと笑った。彼女は片付けの手を再開させて、再び口を開く。


「ここは本当に、奇跡の町です。角族でも、こんな枷を付けていても、誰も指を差さない。"逃げた奴隷"として警備隊に通報されたりもしない。……他の町では、有り得ないことです」

反対側を向いているせいで、キリクにイーコの表情は見えない。彼女は淡々と話す。


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