今日は良い日だ
心地の好い夢から押し上げられるようにして目を開けた。
ここは何処だろう。おれは一体何をしていたのだろう。キリクは視線だけを動かして辺りを見回した。
どうやら部屋のようだ。見覚えがある。造りから言ってキリクが間借りしている宿屋の一室だった。
「いっ……!?」
不意に強烈な頭痛がキリクを襲う。後頭部から頭の前面にかけて全体的に痛む。手で触ってみると、頭は包帯でぐるぐる巻きになっていた。勢い余って左目まで包帯で覆われている。
(何だっていうんだ……)
起き上がろうとする気力も削がれる。キリクは小さく溜め息を吐いた。
「、キリクさん……?」
すぐ傍で小さな声がした。視線だけ動かしてその声を辿ると、そこに居たのは心配そうな顔をしたイーコだった。ベッドの横に椅子を設けて座っている。うたた寝でもしていたのだろうか、こする目は赤い。
「イーコ……」
そこでようやくキリクは、今までのことを思い出した。自分のした無茶やイーコの受けた仕打ちの数々を。
「良かった、無事だったんだな」
キリクは心の底から安心した。笑みを綻ばせると、それを見たイーコの瞳にたちまち涙が浮かんだ。
「良かった、キリクさん……。もう目を覚まさないかと思った……っ」
琥珀色の瞳が涙で曇っている。キリクは頭の痛みに耐えながら起き上がった。