今日は良い日だ
「そうだ、キリクさん」
思い出したようにイーコが声を上げる。
「これ、お返しします」
そう言ってイーコは傍のキャビネットの上に置かれていた短剣を手にとってキリクに差し出した。
それは例の短剣だった。イーコの父親の形見。キリクが荷台の上から咄嗟に手に取ったものがこれだったのだ。イーコが気付いて持ち帰ってくれたのだろう。
キリクの心は既に決まっていた。
「お前の働きは、その短剣に見合ってる。それがお前の報酬だ。受け取ってくれ」
イーコはキリクと短剣を交互に見つめた後、短剣を握り締めてぎゅっと胸に抱きしめた。
「ありがとうございます……」
その姿はさながら、生き別れた父親との感動の再会、といったところだった。
(めでたしめでたし)
心から嬉しそうなイーコの姿を見て、キリクはそんなことを思った。