今日は良い日だ
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数日後、体調が大分回復したキリクはこの町を離れることにした。左のこめかみの辺りの切り傷はまだ少し痛むが、左目の視力に問題はない。旅を続けられそうだ。
大量の食料を買い込んでからラクダ小屋に行き、一週間と少しぶりにハールに会う。ハールは相変わらず気だるそうな表情をしていたが健康そうだった。
「久しぶりだなハール。またよろしく頼む。親父、世話になった」
「へえ、とんでもない。宿屋の親父から話は聞いてますんで」
ラクダ小屋の店主は気前良く返事をした。
「先払いができなくてすまなかったな。延長の分の料金と、それから荷台をお返しする」
店主の手に延長分の代金を置いてから、キリクはハールの背に荷物を乗せる。この町に入った時よりも幾分か少なくなった荷物はあっという間にハールの背に積み上がった。
借りていた荷台を店主に返しもう一度礼を言い、キリクは店を出た。
そしてそのまま、町の門をくぐる──
「キリクさんっ」
自分の名を呼ぶ声に反射的に振り返る。そこに居たのは、先ほど宿屋の前で別れた筈のイーコだった。
「イーコ、」
どうかしたのか、そう声を掛けるよりも早くイーコはキリクに駆け寄り、手に持っていたものをキリクの目の前に差し出した。