今日は良い日だ


「これは預かっておくよ。いつかお前に返す、その時が来たらな。だからまた会おう。いつか、必ず」

ハールの手綱を手に取ってからキリクは言葉を続ける。


「今は無理でも、いつか、お前がこの町を出られる日が来るように。何処へでも安心して行けるように。おれも頑張ってみる」

だから、それまで生きてろ。


キリクは微笑んだ。やがてイーコも、力強く頷いた。


「私、キリクさんに会えてよかったです」

イーコが呟くように言った。


「……おれもだよ。じゃあな」

最後に優しくイーコの頭を撫でてから、キリクは町の門へ向かって歩き出した。ハールが隣でのそのそと歩く。


一面の砂漠に、青い空が広がっているのが見える。最低でも五日掛かる隣町までの旅路に思いを馳せてキリクは溜め息を吐いた。


「……しっかり頼むぞー、ハール」


しかし、彼の心は晴れやかだった。




耳障りな金属音は、もう聞こえない。































今日は良い日だ




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