今日は良い日だ
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「着いた……」
目をキラキラと輝かせ、キリクは町を見上げた。漆喰の壁の建造物がずっと奥の方まで続いている。メインストリートは生き生きした商人の声で溢れ返り、どこかから陽気な音楽が聞こえる。大きくて立派な町だ。本当にあったんだ、オアシスは。
ラクダのハールもどこか満足げな表情でキリクに続く。キリクは早く町を見たい気持ちを抑えて、町の門の近くにあったラクダ小屋を訪ねた。滞在期間中はここにラクダを預けられる。ハールも仲間に入れてもらうことにしよう。
店に近付くと、店主らしき親父が出てきて愛想良くキリクを出迎えた。
「いらっしゃい旦那。何泊のご予定で?」
さっそくハールの手綱を引きながら店主は言った。
「ああ、そうだな……。親父、この町はどのくらいでかいんだ?」
「そんじょそこらの町よりずっと立派ですぜ。たとえば旦那が来たであろうウェステの町と比べると倍はあります」
「そんなにでかいのか! よし分かった。とりあえず一週間分の料金を払おう。それよりも長く滞在するようだったらまた来る」
「へえへえ、分かりました」
「こいつの名前はハールだ。好き嫌いはない、何でもよく食べる。だが水だけは切らさないでやってくれ」
ハールの頬をぽんぽんと叩きながらキリクは言った。