今日は良い日だ
「へえ旦那。それで、背中に乗った荷物はどうします? こりゃまた大量で」
「おっとそうだった。すまないが飯を食って宿屋を探してくるから、それまでの間だけ預かっていてくれないか。それと、この辺に荷台を貸してくれる店はあるか」
「分かりました、丁重に扱いましょう。荷台なら、ウチに使ってないのがあるんで良かったら使ってくだせえ」
「いいのか?」
「へえ、もちろんです。ここはオアシス、旅人をもてなすことが住民の義務です。私に出来ることならなんなりと」
「すまないな、ありがとう。では先に支払いを済ませておこう」
キリクの言葉に、親父は一週間分のハールの世話代を提示した。キリクはその通りの額を懐の巾着から取り出して渡す。親父は頭を下げてから、「確かに受け取りました」と言ってもう一度頭を下げた。
「二刻ほどで一度戻る。宜しく頼む」
服の襟をきゅ、と正してから、キリクは町の喧騒へと足を向けた。「幻のオアシス」とまで言われている筈なのに、なんと人の多いこと。そこらの町よりずっと賑わっている。
「こりゃ商売のしがいがありそうだっ」
キリクは期待に胸を膨らませ、この町では何が高く売れそうか思案しながら歩いた。すれ違う人々の服装や顔色、家々の装飾なんかを観察した上で、彼らは何を欲し何に高い金を払いたがっているのか、そんなことを。