愛してる
6月
ある日、帰り道に夕立が降った。
傘を持ってるかと彼から連絡が入った。
持っていなかったけれど、
大丈夫だと答えた。
それなのに彼は、仕事を抜け出して
駅まで傘を持ってきた。
ばかだな。
自分がびしょ濡れだよ。
思わず抱きしめた。
遠慮がちにしたはずなのに
彼は私をさらに強く包み込んだ。
彼の胸の音が、はやい。
濡れた彼のワイシャツから
彼の香りがした。
「ごめんね。あと、すこしだけ」
そう言って彼は、
私を離そうとしなかった。