五つの顔を持つ私



“あ~あ、めんどくさい”

聞こえる声。

きらの本心。

“ほんとに女って気持ち悪い生き物だな”

“顔と肩書きしか見てないで簡単に堕ちる”

“だから嫌いなんだよ、女って生き物は”

“気持ちわりぃ、シャワー浴びよ”

「ゆか、シャワー浴びてくるね」

「あっそ」

相変わらずね、きらは。

きらは昔母親に売られた過去がある。

きらの母親も父親もNo.1のホステスだった。

仕事にばかり目がいき、両方とも浮気をしていた両親は次第に育児を放棄するようになり、きらを売った。

当時まだ小学生で行く宛もなく、生きていくことすら困難だったきらは身体を売って生計を立てていくことしか出来なかった。

ホテルに住み、女と関係をもっては金をもらっていた。

小学生といっても誰をも魅了する美貌をもっていたきらは金には困らなかったけど女を軽蔑するようになってしまった。

そんなときに麗が現れ、きらを救った。

身体を売ることを止めさせ、新しい部屋を用意した。

幹部になることを条件に。

……きらの美貌は確実に両親から遺伝されているわね。

そんなこときらには絶対に言えないけど。


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