五つの顔を持つ私


ガチャ

「みっずき~!!」

いきなり扉が“勝手に”開き、みすずが入ってきた。

きょろきょろ見回してみずきを探すけど生憎、みずきはまだ帰ってきてない。

「あれ?みずきは?」

「みすず、ノックをして静かに入ってきなさいといつも言ってるでしょ?それから能力は日常生活ではできるだけ使わない」

「ゆかだって使ってるくせに」

「私はコントロールできないから仕方ないのよ」

「私だってコントロールできないし~」

「ああいえばこういう。ほんっと屁理屈ばっかり」

「ゆか、お母さんみた~い」

「やめてくれる?変なのと例えないで」

「そんなことよりみずきは?」

「まだ仕事から帰ってきてないわよ」

「ふぅ~ん、なんだ。じゃ、帰ろ」

つまんなそうに唇を尖らせたあと、また能力で扉を開け颯爽と出ていった。

「なんだったの…」

「う~ん、おいし~!」

ハッとして見ると超特大のビックケーキを半分以上一人で食べ、これ以上ないくらい幸せいっぱいの顔をした麗が歓声を上げていた。

…ごめん、あなたのことすっかり忘れていたわ。

ていうか、よくそんなに食べれるわね。

なぜ太らないのか不思議でならないわ。

「ゆかも食べる?おいしいわよ」

「い、いえ、結構よ…」

「こんなおいしいのに……もったいない」

おかしい。

絶対おかしい。

ホイップクリームがたっぷり乗ってて超高カロリーで甘ったるそうないかにも甘甘って感じのケーキなのに。

それが超特大号…………う゛え゛っ。

考えただけで吐き気が…。

そんなものよく食べれるわね。

ああ~、見てるだけで胸焼けしそう。


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