五つの顔を持つ私
その瞬間、教室の空気が凍りついた。
全員が全員なにが起こったのか理解できなかった。
唯一仁だけがにっこにっこして私を見つめていた。
ああ…。この世の終わりだ…。
「…じ、仁?この女と知り合いなのか…?」
「そうだけど?俺の彼女」
平然と言ってのける仁にまたもや空気が凍った。
一拍後、
「「「はぁあぁあぁあ!?!?!?!?!?!?」」」
耳をつんざく悲鳴がそこかしこから鳴り響いた。
地鳴りがしたのかと思うほど、教室が揺れた。
他クラスの人達は何事かと廊下にわらわらと溢れだし、教師陣はなにか大変なことがあったのかと慌てて駆けつけた。
教室は泣きわめく子やあまりの衝撃に気絶する子、絶対に信じない、これは夢だと現実逃避する子がいっぱい出て、まさに地獄絵図。
当の本人はけろっとしていて、平気で私の至るところを触ってくる。
まるでこの世界には自分と私しかいないような態度。
仁には自分が引き起こしたこの騒ぎのことなんかどうでもいいんだ。それどころか視界にも入ってない。
私は仁の手を払い除けながらこの後どうするかを考えた。