絶対王子は、ご機嫌ななめ
第一章
一目惚れ
「行ってきまーす」
大きな声で叫ぶと、玄関から外へと勢いよく飛び出した。
「柚子、忘れ物はないー?」
「大丈夫!!」
キッチン横の窓から私を呼ぶ母の声に意気揚々答えると、納車されたばかりの車にさっそうと乗り込む。
「今日からよろしくね」
ハンドルにチュッとキスしエンジンを掛ける。ブルルンと車体が揺れると、私のテンションも上がり始めた。
前から欲しかった軽自動車。チョコレート色と可愛らしいフォルムが気に入って、バイトでお金を貯めてやっと手に入れた大事な車だ。
「今日に間に合って良かった」
ホッと息を吐きアクセルを踏み込むと、車はゆっくりと動き出した。
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