絶対王子は、ご機嫌ななめ
「もう九時を回ってる。時間だからな、腹も鳴るだろ。いちいち、そんなこと気にするな。さあ食べるぞ」
政宗さんはそう言うけれど、私だって一応女なんだから、好きな人の前でお腹が鳴るのはやっぱり気になる。でも政宗さんが私を気遣って言ってくれた言葉だと思うと、ちょっぴり嬉しい。
顔を上げると、優しく微笑む政宗さんと目が合った。トクンと胸が高鳴る。
今日の政宗さんは、どうしてだかよく笑う。この笑顔なら“スマイル王子”と呼ばれていたのも、頷けると言うものだ。
職場でも、その笑顔でいてくれればいいのに……。
「何? なんか文句でも言いたそうな顔してるけど」
「い、いや。政宗さんに文句なんてあるわけないじゃないですか! 嫌だなぁ、もう~」
政宗さんはいちいち人の心を見透かしているようなことを言うから、癪にさわる。まあなんでも気持ちが顔に出てしまう、私も私なんだけど。
そんなこんなしているうちに、お腹が二度目の音を鳴らす。
「いただきます!」
腹ペコ指数がマックスで、辛抱たまらんと声を上げた。
「ああ、いっぱい食えよ。おまえはもう少し、身体に肉を付けたほうがいい」
「ほうへすか?(そうですか?)」
「食べてからしゃべろ」
ああ、そうでした。
私は慌てて咀嚼して飲み込むと、冷たい水を喉に流し込んだ。