絶対王子は、ご機嫌ななめ
「今日はいろいろとお世話になってしまってすみませんでした。でもやっぱり、これ以上政宗さんに甘えるのは申し訳ないので、今日は帰ります」
そこまで言うと、政宗さんから目をそらした。このまま顔を見ていたら、決心が鈍りそうだから……。
席を立ちリビングにある荷物を持ち、ペコリと頭を下げてから部屋を出ようとドアのノブに手を掛けた。
とその時──
「帰さない」
いつになく低い声が耳に届く。その声に驚き、おもわず足が止まってしまう。
それでも振り向かないままその場に立っていると、政宗さんが近寄る気配を感じた。
「酒のんだし遅れないけど、どうやって帰るつもり?」
「その辺で、タクシー拾います」
「もうこんな時間だ。大通りまで出ないと拾えない」
「じゃあ歩いて帰ります」
「その身体で?」
「大したことないから、大丈夫です」
「なんでそんなに強情なんだ?」
「政宗さんこそ、なんで私に構うんですか?」
私のことなんて、放っといてくれればいいのに……。
そう思っているのに、政宗さんは私の身体を後ろからギュッと抱きしめた。