絶対王子は、ご機嫌ななめ
「……教えてやらない」
「え?」
どうしてここで『教えてやらない』になるの? しかも、そんなに溜めてから言うこと?
それを答えることは、大したことじゃないと思うんだけど。
でも政宗さんは私の膝に包帯を巻き終え腰を上げると、私の頭をポンと一つ叩いた。
「できたぞ。あんまりうまくないけど、これで勘弁してくれ」
政宗さんにそう言われ膝に目を落とせば、どれだけ巻いたんですか?と言わんとばかりに包帯がこんもりとなっている。
「ぶっ……。政宗さん、これじゃあ膝が動かせないんですけど?」
「風呂にも入ったんだし、もう大して動くこともないだろう。俺も風呂に入ってくる。冷蔵庫の飲み物、なんでも飲んでいいからな。好きな様に過ごして待ってろ」
頭の上にある政宗さんの手が、私の髪をクシャッと撫でる。その仕草がなんだかくすぐったくて首をすぼめると、ふっと笑い声を残して政宗さんはリビングから出て行った。
「なんなの、一体」
政宗さんの意味深な行動に、私の心は振り回されてばかり。男性とお付き合いしたことのない私には経験のないことばかりで、さっぱり分からない。
「私は年をとると、どんな感じになるっていうのよ……」
母親のことを思い出してみる。
「どこにでもいる、普通のおばさんじゃない」
やっぱり政宗さんの考えていることは、全く分からない。