絶対王子は、ご機嫌ななめ
政宗さんは『好きな様に過ごして待ってろ』って言ってたけれど、人様の家で好きなようにしていられるほど図太い神経はしていない。かと言って、ぼーっと政宗さんのことを待っているのも退屈だ。
そろりと目線を動かせば、リビングテーブルの上に何冊かの雑誌が置いてるのに気づく。どんな雑誌だろうと手を伸ばせば、それはゴルフの月刊誌。
「さすがは、元プロゴルファーだよね」
今でもレッスンプロとしてゴルフを教えているわけだし、当然といえば当然か。
ゴルフ練習場で働き出して二ヶ月。
父親とゴルフをテレビ観戦していた頃よりは、ゴルフのルールも覚えてきた。実は仕事の終わったあと政宗さんにクラブを握らせてもらい、ボールを打たせてもらったこともあったりする。
とは言っても、まったく素質がないのか、ボールは2~3メートル先にコロコロと転がっていっただけだけど……。
政宗さんが背中側から密着して、まるで私を抱きしめるようにゴルフの姿勢を教えられると、鼓動が激しくなって集中できなくなってしまう。
でもまたクラブを握りたいと思うのは、政宗さんが教えてくれるから?
「どんだけ政宗さんのことを好きなんだろう……」
その時のことを思い出してひとりで赤面していると、雑誌で顔を隠してソファーに転がった。