絶対王子は、ご機嫌ななめ
リビングのドアが開けっ放しだからか、耳を澄ませばバスルームからシャワーの音が聞こえてくる。政宗さんがシャワーを浴びる姿を勝手に想像して、顔の色を更に赤くした。
恋愛経験のない私は、父親か兄の全裸しか見たことがない。それも子供の頃の話。
なのに私ったら、何を勝手に想像してるんだろう……。
「バカバカしい」
大きくため息をつくと、さっきまで聞こえていたシャワーの水音が消えているのに気づく。
あれ? もしかして、政宗さんはシャワーを浴びるだけの人?
なんて考えているとバスルームのドアが開く音がして、ゆっくり歩く足音がリビングに向って近づいてきた。『あっ』と思った時にはリビングのドアが開いてしまい、起き上がるタイミングを逃してしまう。
「柚子?」
政宗さんがソファーに近づく気配に、自然と身体に力が入る。顔を覗きこんでいるのか彼の息づかいを感じて、緊張しながらも狸寝入りを決め込んだ。
「寝てるのか?」
政宗さんの優しい声に『はい』と答えてしまいそうになって、それをぐっと堪える。