絶対王子は、ご機嫌ななめ
第六章
言ってはいけない言葉
さっきから頭の中には、円歌ちゃんの顔がちらついている。私が引き起こした状況じゃないけれど、何もないとはいえこの状況はいかがなものか。
何もない? 本当に何もなかったの!?
かろうじて動かすことの出来る手で、自分の身体を触ってみる。
うん、ちゃんとパジャマも着てる。特に何かをしたような違和感も、身体からは感じない。って、そんな経験したことないから、違和感を感じるのかどうか分からないんだけど……。
「いい歳して、恥ずかしい……」
「何が?」
「えぇっ!? ま、政宗さん、起きてたんですか?」
寝てるものばかりと思っていたから、驚きすぎて心臓の鼓動が半端なくうるさい。
「いや。起きてたんだじゃなくて、今起きた。起こされたって方が正しいか」
政宗さんはそう言って大きくあくびをすると、私の身体に巻き付けている腕に力を込めた。人をこれだけ驚かせておいて、飄々としすぎじゃないだろうか。
「ちょ、ちょっと政宗さん! この腕、どけてくれませんか?」
「なんで? もう朝なのか?」
「うん? どうなんでしょう……って、話をすり替えるのはやめて下さい!」
私の話を聞いているのかいないのか、政宗さんはかったるそうに頭だけ起こすと目を開けた。