絶対王子は、ご機嫌ななめ
「なんだ、まだ五時じゃないか。今日は仕事休みなんだろ? ゆっくり寝とけ」
こんな時間に起こすなと言わんばかりに政宗さんはまだ眠そうに言うと、また私に身体を寄せた。
「そ、それはそうですけど。でも政宗さんは仕事ですよね?」
「休みにした」
「え?」
休みにしたって、そんなこと簡単にできることなの?
うちのゴルフクラブにはレッスンプロが五人いるけれど、シフトは一ヶ月前には決っているはず。それを休みにしたなんて、もしかして……。
「政宗さん、智之さんに無理言ったんじゃないんですか?」
「無理なんて言ってない。あいつは快く変わってくれた」
そんなの絶対に嘘。今日は土曜日でレッスンに来る人も多いから、なかなか休みになることがない。しかも今回は日曜日と合わせての連休だったはず。貴重な連休を快く変わってくれるなんて、あの智之さんからは考えられない。どんなことを言ったかまでは分からないけれど、強引に交代させたに決まってる。
電話口でうなだれている智之さんが安易に想像できて、申し訳ない気分になってしまった。