絶対王子は、ご機嫌ななめ
『柚子、起きろ──』
遠くで私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
この声は、政宗さん?
夢の中にまで政宗さんが出てくるなんて、今日はなんてラッキーな日なんだろう。
布団の中で身体を丸め政宗さんの声の余韻に浸っていると、頭までですっぽり被さっていた掛け布団がバサリとめくり上げられた。
「いつまで寝てるんだ。朝食ができたから、そろそろ起きろ」
夢ってこんなリアルに感じることもあるんだなんて、寝ぼけながら目を薄っすら開けると……。
「わあぁ!! 政宗さん!?」
目の真ん前には、見目麗しい政宗さんのお顔。
「何をそんなに驚いてるんだ?」
大好きな人の顔が、今にも唇が触れそうな距離にあるんだから、そりゃ誰でも驚くでしょ!
慌てて少しだけ顔を離す。だけど追うように政宗さんが近づいてきて、それを何度もくりかえいしていると背中がヘッドボードにぶつかった。
「なんで逃げる。まだ目が覚めてないのか?」
「逃げるって。政宗さんが寄ってくるから、それで……っ!?」
下がってるだけ……の言葉は、政宗さんの唇で消されてしまう。
ふわりと重なった政宗さんの唇は、私の唇を二度ほど柔らかに食むとチュッと音を立てて離れた。
「目、覚めたか?」
目をぱちくりさせている私をよそに、政宗さんは満足そうな笑みを見せた。