絶対王子は、ご機嫌ななめ

土日になるとテレビで中継されるゴルフトーナメント。父親がゴルフ好きで、子供の頃よく一緒に見ていたものだ。

ルールは全然わからなくて、小さなボールをクラブで打って飛ばし、グリーンに開いている小さな穴に入れるスポーツだというくらいの認識しかないけれど。

昨日のお礼も兼ねて挨拶しようと一歩前に出て政宗さんの前に立ったけれど、私の顔を見るやいなやその顔を無愛想なものに変えてしまった。

なんだかちょっとショック……。

でもここで落ち込んでいるわけにもいかなくて、小さく息を吐くと口を開いた。

「昨日はありがとうございました。こちらで働くことになりました、橘柚子です。よろしくお願い致します」

私の言葉に何も返してくれない政宗さんは、まるで品定めでもするように私のことを上から下まで確認するようにみると、なにか面白いことでも考えついたのか眉をピクッと動かした。

「柚子ねぇ……。じゃあ今日からお前のことは、ジャムって呼ぶことにするわ」

「へ? ジャ、ジャム!?」

柚子だから、ジャムってこと? 意味わかんないんですけど。

そりゃね柚子ジャムは美味しくて私も好きだけど……って、そういうことじゃなーい!!

人のことをジャム呼ばわりするなんて、いくら政宗さんでも許されることじゃない。

「お言葉ですけど、いきなりジャム呼ばわりはないんじゃないですか?」

「マズいか?」

「マズいです!!」



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