絶対王子は、ご機嫌ななめ
不意に抱きしめられて、一気に心拍数が上がっていく。
「ため息なんてつくな」
私の気持ちを知ってか知らずか、政宗さんが勝手なことを口にする。
誰のせいでため息をついたと思ってるのよ!
どんなつもりでこんなことしてるか分からないけれど、私が子供だと思っていい加減からかうのはやめてもらいたい。
「政宗さん」
「なんだ?」
「離して下さい。さっき言いましたよね、こういうことしたら絶交だって」
「ああ、あれか。でもおまえは“キスしたら”って言ったんじゃなかったか?」
「同じことです。こういうことをしたら悲しむ人がいるってこと、ちゃんと分かってるんですか?」
「はぁ? おまえ、何言って……」
政宗さんのあまりの鈍感さに、堪忍袋の緒が切れた。
「政宗さんって勝手ですよね。ああ、もしかしてその左手の関節炎って、大したことないんでしょ? ただ勝てなくなったからプロを辞めたんじゃないんですか?」
「おまえ、なんで左手のことを……」
抱きしめられていた力が緩められ身体は少し離れると、政宗さんは驚いた顔をして私の顔を見つめた。その顔は悲しそうにも見えて、私は言ってはいけないことを言ってしまったんだと後悔した。