絶対王子は、ご機嫌ななめ
でも今更、言ってしまった言葉は消すことができなくて。
「政宗さんなんて、大嫌い!」
そう叫ぶと、政宗さんの身体をおもいっきり突き飛ばす。
自分が思っていた以上の力が出てしまい、政宗さんはキッチンの壁に激突すると痛そうに顔を歪めた。
自分にこんなにも力があったなんて……正直驚きだ。でも今は政宗さんに構っていられない。
少しだけ申し訳ない気持ちから政宗さんに向って頭を下げると、リビングに置いてあった鞄を掴み玄関を飛び出した。
まだ身体のアチコチが痛むけれど、今はそんなことより早くここから遠ざかりたい。痛みをこらえて走り続けると、大通りに出たところでタクシーを捕まえた。
「お客さん、大丈夫ですか?」
運転手さんにそう声を掛けられて、自分が泣いていることに気づく。
「すみません、大丈夫です」
あふれた涙を手でゴシゴシ拭い目的地を伝えると、運転手さんは黙ったまま車を走らせた。