絶対王子は、ご機嫌ななめ
しかしその決意も、ロッカールームの前で険しい顔をして立っていた政宗さんを見て、一気に萎えると足が止まる。それでも何とか足を踏み出すと、私の足音に気づいた政宗さんが振り向いた。
怖っ!!
いつも以上に不機嫌そうで、心の中でそう呟くと、政宗さんと目が合わないように顔を背ける。そのまま歩き続けロッカールームの前に到着すると、少しだけ頭を下げてからドアノブに手を掛けた。
「おい、柚子」
政宗さんの普段より低い声に、身体がビクッと震える。そして慣れとは恐ろしいもので、ついいつもの癖で反射的に振り向き「はい」と答えてしまった。
しまった!……と思っても、時すでに遅し。
ばっちり目が合うと、近づいてきた政宗さんにドアへと追い詰められてしまう。それが最近巷で騒がれている“壁ドン”という状態だっただけに、私はただ驚くしかなかった。
政宗さん! ちょっと距離が近いです!
こんなところを円歌ちゃんにでも見られたりしたら……。
そう思うだけで心拍数はずんずん上がっていき、身体中が緊張感に包まれていく。
「昨日は、なんで勝手に帰った?」
怒っているのかいつもと変わらないのか、よく分からない政宗さんの声に少々戸惑いながらも首を傾げた。