絶対王子は、ご機嫌ななめ
それって私が言わなくちゃいけないこと? そんなこと、絶対に答えてなんてあげないんだから!
無視するなんて、大人げないことだって分かってる。ちゃんと話をしたほうが、この状態から早く開放されるっていうことも。
でも今ここで政宗さんと少しでも言葉を交わしてしまえば、彼の口車にまんまと乗せられてまた元通り。何でも言うことを聞く羽目になって、私と政宗さんの関係性があやふやになってしまう。
「だんまりを決め込む気か?」
今度は完全に怒ってる声でそう言うと、大きなため息をひとつついてから「分かった」とポツリつぶやき私から身体を離した。
私から目線も外しくるりと向きを変えると、政宗さんはそのまま歩き出してしまう。
え? えぇ? ちょっと待って!
分かったって、何が分かったっていうの?
それがやけに気になって政宗さんを呼び止めようとした、その時……。
「あれ? 政宗さん、おはよう。今朝は早いのね」
円歌ちゃんの登場で、私が政宗さんの名を呼ぶことはなかった。