絶対王子は、ご機嫌ななめ

あれだけ元気な政宗さんのことだ、病気だとは考えにくいけれど。“鬼の霍乱”なんて、ことわざもあるくらいだし……。

関節炎が悪化したとか? ううん、もっと命にかかわるような病気で入院したのかもしれない。

そう思うと居ても立ってもいられなくなって、事務所を飛び出すと円歌ちゃんがいるフロントへと急いだ。

「円歌ちゃん!」

バイトの女の子と話をしている円歌ちゃんを見つけると、走ってきた勢いのまま円歌ちゃんの肩をグッと掴む。

「ちょ、ちょっと柚子。血相変えて、どうしたっていうのよ!?」

「政宗さん!」

「え? 政宗さんに、何かあったの?」

「ち、違う! どうして政宗さん、ずっと休んでるの? どこか身体悪いの? どこに入院してるの?」

もう分からないことだらけで、出てくる言葉は全部疑問形。まだ病気だと決まったわけじゃないのに、私の中での政宗さんは、もう既に入院したことになってしまっていた。

「柚子、ちょっと落ち着いて。言ってる意味が全く分かんないんだけど?」

今度は逆に、円歌ちゃんが私の肩を押さえる。

「だから、政宗さんの病気って……」

「政宗さんなら、月曜からプロツアーに参戦してるわよ」

円歌ちゃんの口から出てきた言葉に驚き、円歌ちゃんの顔をマジマジと見つめた。



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