絶対王子は、ご機嫌ななめ
言っちゃったって……。それで私がどれだけ苦しい思いをしたのか、智之さん、あなたは分かってるの?
腹ただしい気持ちが込み上げてきて、智之さんのことをギロッと睨みつける。でも智之さんは反省しているのかしてないのか、アイドルみたいに口を尖らせると肩をシュンとすぼめてみせた。
「そんな可愛い顔したって、許してあげませんから」
「え? 僕のこと、可愛いって思ってくれるの? だったら付き合っ……」
「付き合いません」
私と智之さんのやりとりを見て、円歌ちゃんがクスッと笑ってみせる。
「柚子と智之さんって、結構相性いいんじゃない?」
「でしょでしょ。ほら~、円歌ちゃんもお似合いって言ってるし。ここは仲良く……」
「ごめんなさい! 智之さんの気持ちは嬉しいですけど、やっぱり私は政宗さんのことが……」
そこまで言うと突然胸がギュッと苦しくなって、目に涙が溜まり始めた。その目をゆっくり瞑ると、大粒の涙がポロッと溢れ頬を伝う。
「柚子……」
近づいてきた円歌ちゃんがそっと私の身体を抱くと、背中を優しく撫でてくれる。
「ま……どかちゃん、政宗さんに……会いたい。今、すぐ……会いたい」
なんであんなヒドいことを言っちゃったんだろう。どうしてあんなヒドい態度をとっちゃったんだろう。