絶対王子は、ご機嫌ななめ
でも二回目のキスは、口から流れでた血を拭っただけでキスとは言わない?
そう考えながらもあの日のことを思い出すと、顔が熱くなり始めた。
「そんな顔赤らめて。柚子って案外エロいのね」
円歌ちゃんに軽蔑され──
「純真無垢とばかり思っていた柚子ちゃんが、汚れてしまった……」
智之さんに蔑まれ──
と言うのは、ちょっと言い過ぎだけど。
ふたりにいいように遊ばれて疲労困憊。それでなくても本当の事実がいろいろ分かって、頭の中はまだ整理できてないというのに。
そんなふたりを横目に大きなため息をつくと、それに気づいた円歌ちゃんがわざとらしくゴホンッと咳払いをした。
「まあ冗談はこのくらいにして。で柚子がどうしたいの?」
「どうしたいって?」
「政宗さんに会いに行くのか?って聞いてるの。今すぐ会いたいんでしょ?」
「それはそうだけど……」
いろいろ聞きたいこともあるし、伝いたいこともある。関節炎のことも気になるし、何よりここ何日も顔を見ていないから政宗さん不足でフラフラだ。
でも今はプロツアー中で、私に構ってるヒマなんてないかもしれない。中途半端な気持ちで試合に挑んでるわけじゃないんだろうけれど、今無理をして左手が悪化したらと思うとじっとしていられない。