絶対王子は、ご機嫌ななめ
はち切れんばかりの想い
時刻は午前五時。
眠い目をこすりベッドから出ると、洗面所へと向かう。
「なに柚子。今朝は早いわね」
一階の和室から母が顔を出し、同じく眠そうな目をこすっていた。
「起しちゃってごめん。ちょっと出かけてくる」
「そう、分かった。なになに、デート? もしかして、この前の彼?」
母は相当政宗さんの事を気に入ったようで、事あるごとに政宗さんの名を出してくる。
「デートじゃないけど、彼に会いに行ってくる」
私のいつもと違う態度に何かを感じ取ったのか、母はいったん部屋の中に戻り何かを手にして私の前に立った。
「はい、これ」
手渡されたのは、青いジュエリーケース。
フタを開けると中には、綺麗なダイヤのネックレスが輝いていた。
「これね、お母さんがお父さんに告白した時に付けてたネックレスなの。見事、大成功。縁起のいいネックレスだから、柚子にあげる。これ付けて頑張ってきなさい」
「お母さん……」
もう、なんでこんな時に泣かせるようなことするの!
一瞬で溢れた涙で、母の顔が見えない。でも良かった、化粧をする前で。
「相変わらず、柚子は泣き虫ね」
「誰が、泣かしたと……思ってるのよ」
こんな時、母親の愛情を感じられずにはいられない。
言葉にはせず心の中で“ありがとう”と感謝すると、ジュエリーケースをギュッと握りしめた。