絶対王子は、ご機嫌ななめ

「ねえ、今の本気で言ってるの? だとしたら、僕怒るから」

もう既に怒ってると思うんですけど……。

とは今の智之さんには言えない。だって、いつもの冗談じゃないと分かるから。

でもなんで、智之さんがそこまで怒るのか分からない。

昨日は円歌ちゃんから政宗さんの恋人じゃないと聞かされて、おかしなテンションになってしまった。気持ちが高ぶって『政宗さんに会いに行く!』なんて言っちゃったけど、政宗さんが本気で試合に臨んでいるならこんな迷惑な話はない。

「本気です。それに告白なら、政宗さんが帰ってきてからでもできる……」

「柚子ちゃん!!」

智之さんが大声で私の名を叫び、身体がビクッと震える。驚きから瞬きもせず智之さんを見つめた。

「ごめん、突然大きな声出して。でも聞いて。もう知ってると思うけど、昔のことが原因で僕と円歌ちゃんくらいに
しか心を開かなかった政宗さんが、柚子ちゃんだけには関心を持ち自分の世話をさせた。それがどういうことを意味してるのかわかる?」

わかる?って急に言われても、分かるような分からないような。でもなんて答えたらいいのか困ってしまう。
ズルい私は智之さんから目線をそらし、少しだけ小首を傾げた。



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