絶対王子は、ご機嫌ななめ
「政宗さーん! 応援に来ましたよー」
その場にいたギャラリーの視線が、一斉にこちらに集中する。すると智之さんと私を中心にギャラリーが周りを囲み、政宗さんから丸見え状態になってしまう。
智之さん、空気読んでよ……。
と思ったところで、智之さんと私を見つけた政宗さんがやっぱりいつもの仏頂面でこっちに向ってきてるんだから、今更どうしようもない。
政宗さんが私を見つけてどう思っているのか、緊張で手は小刻みに震えしっとりと汗ばんでくる。
「柚子ちゃん、政宗さん来たね」
「分かってます!」
人の気も知らないで楽しそうに言う智之さんに、ちょっとキツメに言葉を返す。
と言うより智之さん、この状況を楽しんでない? わざと大きな声で、政宗さんを呼んだとか?
私の気持ちを知ってて、そんな意地悪するなんて……。
智之さんの顔を見てみるといつも以上のニコニコ笑顔。初めて彼の本性を見た気がした。
「智之、どうして柚子を連れてきた?」
久しぶりに聞いた政宗さんの声は、怒っているのかその低さに身体が縮こまる。
やっぱり来るべきじゃなかったかも……。
こんなんじゃ告白どころか、話さえ出来ないかもしれない。
悲しくなってきて下唇を噛み俯くと、頭の天辺に重みを感じた。